大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)2765号 判決

被告人 荒井市郎

〔抄 録〕

T、U両弁護人の控訴趣意について。

原判決の挙示引用に係る標目の各証拠を綜合すれば原判示の事実は優にこれを認めるに足り事実誤認の疑はなく、また法律の解釈適用を誤つた違法も存しない。原判示東西上屋倉庫株式会社の保税上屋及び保税倉庫における保税蔵置中の貨物の保管責任者は右会社社長米田富士雄であつて同人は被告人を補助者として保税貨物を保管蔵置していたものと認められ被告人が右会社の従業員として輸出入貨物の水揚、庫入、庫出、貨物の整理等に関する業務に従事し、且つ倉庫の鍵を所持していたのは、いずれも右会社社長の指揮監督の下にその機械的補助者として保税貨物の保管業務に従事しておつた占有機関に過ぎないものというべきであつて、すなわち被告人は主たる占有者たる右会社社長米田富士雄の指揮監督の下に従属的地位において機械的補助者として事実上の支配をなしていたのに過ぎず、主たる占有者米田の単なる占有機関であつて独立の占有を有するものでないこと明らかである。従つて被告人が原判示の如くその保税上屋において保税蔵置中の保税貨物たる株式会社高島屋の所有に係る外国製ナイロンストッキング十二足を不法領得の意思をもつて被告人居宅へ持ち出した所為は前記米田富士雄の保税貨物に対する事実上の支配を侵害し被告人の独占的支配下に移したものであつてこれが窃盗罪の構成すること明らかでありその結果株式会社高島屋の前記輸入貨物に対する所有権が侵害せられた関係にあるものであるから原判決には所論の如き違法はなく論旨の引用する判例はいずれも本件については適切でない。それゆえ論旨は理由がない。

(中村光 脇田 鈴木)

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